ロード・オブ・ザ・リング
二つの塔
2003/01/21 丸の内ピカデリー1
物語の完結を見ずして観客を満腹状態にしてしまうすごい映画。
ヘルム渓谷での大規模戦闘シーンはすごい迫力。by K. Hattori
「早く続編が観たい!」と猛烈に思わせた前作から1年。いよいよ公開される『ロード・オブ・ザ・リング』の第2部だが、なんと今回は映画を観終っても「続編が観たい!」と思わないのだ。あまりの興奮。あまりのスケール感。あまりのボリューム。あまりの密度と充実感。2時間59分の映画が終ると、「お腹一杯でもう食べられません!」という気分になる。今はとてもではないけれど、続編のことなど考えられないよ。
前作『旅の仲間』(邦題にも副題付けてよ!)はフロドたち9人の仲間が一緒に旅をする物語だったが、前作のラストでボロミアが殺され、ピピンとメリーがウルク=ハイに誘拐されてしまう。今回の『二つの塔』では仲間たちが3つのグループに別れて旅をしている様子を、3つの物語として描く構成だ。フロドとサムは滅びの山を目指す旅の途中、指輪を取り戻そうとするゴラムと出会って一緒に旅をすることになる。ピピンとメリーはウルク=ハイから逃れて迷い込んだ森の中で、森の守護者であるエント族の長老“木のヒゲ”に出会う。アラゴルン、レゴラス、ギムリは死んだと思われていたガンダルフと再会し、サルマンの軍勢に取り囲まれたローハンの国を守る戦いに身を投じていく。
この映画を観ると、前作は大きな物語のほんの序章に過ぎなかったということが痛感される。登場人物のキャラクターが深く掘り下げられて、どの人物も素晴らしい個性を発揮し始めるのだ。特に前作ではフロドにつきまとうだけだったホビット族の仲間たちが、著しく成長しているのは感動的ですらある。サムのフロドに対する献身ぶり。以前はトラブルメーカーでしかなかったピピンとメリーが、エント族の前でしめす飛び切りの勇気。放浪者だったアラゴルンは戦うリーダーとしての才覚を存分に発揮し、レゴラスやギムリとの友情の絆もさらに堅く確かなものになっている。ガンダルフもバルログとの戦いを経て、より強力な魔法使い「白のガンダルフ」へと生まれ変わった。
3つの物語にはそれぞれかなり厚みがある。エント族が戦いに参加するシーンは『もののけ姫』みたいだし、新たに登場したゴラムの複雑なキャラクターは、興味深いと同時に哀れに見えた。だがそうしたエピソードより今回観客を圧倒するのは、ローハンのヘルム渓谷における、サウロンの軍団と人間・エルフ連合軍の戦闘だろう。
日没と同時に暗い地平線から現れるウルク=ハイ軍は、いかにも「闇の軍勢」という感じがして不気味。それが次々に城壁に襲いかかり、圧倒的に優る数の力で防備を乗り越え、城壁を破壊し、城門を押し破り、少しずつ確実に砦の中心部へと迫ってくる。永遠に続くのではないかと思われる戦闘。倒しても倒しても、その屍を乗り越えて現れるウルク=ハイたち……。戦闘がようやく終る頃には、映画を観ている方もヘトヘト。久しぶりに大型スペクタクル映画の醍醐味を味わいました。
(原題:The Lord of the Rings: The Two Towers)
2003年2月22日公開予定 丸の内ピカデリー1他・全国松竹東急系
配給:日本ヘラルド映画、松竹
(2002年|2時間59分|アメリカ)
ホームページ:http://www.lotr.jp/