ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔
《スペシャル・エクステンデッド・エディション》
2004/02/04 東劇
人間・エルフの連合軍とウルク=ハイ軍団の死闘を描く大長編の第2部。
劇場版より長くなって物語の世界がだいぶ広がっている。by K. Hattori
昨年末にDVD発売された『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔 《スペシャル・エクステンデッド・エディション》』が、完結編『王の帰還』の公開直前に劇場公開された。当初の劇場版は上映時間が2時間59分。《スペシャル・エクステンデッド・エディション》は、それより40分以上長くなっている。僕は2つのバージョンを詳細に比較しているわけではないのでどこがどう増えたのか詳しくはわからないが、戦闘シーンはほぼ共通で、ドラマ部分が大幅にボリュームアップしているような印象を受けた。
僕は劇場版『二つの塔』を観て戦闘シーンに満腹になってしまったのだが、この《スペシャル・エクステンデッド・エディション》はそれほどでもなかった。これは戦闘シーンの迫力が減じているということではなく、戦闘と戦闘の間にドラマが入って物語の世界が大きく広がったことにより、「戦闘シーンばっかり!」という劇場版の印象が別のものへと変化したのだと思う。
登場人物たちの関係性に濃密なドラマが生まれたことで、劇場版ではわかりにくかった(あるいは希薄だった)人物相関図は輪郭がくっきりと浮き上がってきている。サルマンがサウロンの軍勢についたのは、自らの野望や欲望のためではなく、彼もサウロンを恐れているからであることが明示される。王族の血を引くアラゴルン本来の身分が徐々に明らかにされ、彼が持って生まれたカリスマ性とリーダーシップが強く発揮されてくる。セオデン王の強さと弱さ、父に疎まれて傷つくファラミアの苦悩と悲しみなど、大きな物語の影に隠されていた人間ドラマが、1歩も2歩も舞台の全面に押し出されている感じだ。
今回観ていて感じたのは、登場人物たちの台詞がいちいち長く、しかも詩を暗唱するようにリズミカルに響く。「蛇の舌」がセオデン王をそそのかしたり、エオウィンを口説こうとする場面ではこの長台詞が不気味な効果を上げているのだが、同時にこれがどうしようもなく時代がかったものにも思えてしまう。これはまるでシェイクスピア劇だ。もっともこうした台詞が、欧米人には「時代劇」の風格を感じさせるのかもしれない。日本の時代劇で「拙者は○○でござる」「それがしは××じゃな?」などの台詞が、雰囲気を出すのと同じなのかも。
長くなって物語り世界が豊かになったのは認めるにせよ、これだけで1本の映画として観たときはテンポが悪いと思う。エピソードとエピソードの間で、物語のペースが少し乱れるのだ。これは短くカットした劇場版の方がずっとよかったと思う。結局《スペシャル・エクステンデッド・エディション》はDVDを購入して、小説を読むように毎日少しずつ少しずつ観ていくものなのかもしれない。たぶん『王の帰還』も含めた全3部作の《スペシャル・エクステンデッド・エディション》は12時間近くなるだろう。それを最初から最後まで、一気に観る必要はなかろう。
(原題:The Road of the Rings: The Two Towers)
1月24日公開 東劇・他
配給:日本ヘラルド映画、松竹
2002年|3時間43分|アメリカ、ニュージーランド|カラー|シネマスコープ|DTS-ES、Dolby EX 6.1、SDDS
関連ホームページ:http://www.lotr.jp/