白昼堂々、武装強盗団がシアトル市中心部の銀行を襲撃。非常警報で警官隊に取り囲まれた犯人たちは、警察側の交渉役として停職中のクエンティン・コナーズ刑事を指名する。コナーズの独断専行を嫌う上層部は、監視役として新人のシェーン・デッカー刑事をチーム入りさせることで復職を容認。こうして現場を指揮し始めたコナーズは、犯人側との交渉を早々に打ち切り銀行に強行突入することを決めるのだが、そこには犯人の仕掛けた巧妙な罠が待ちかまえていた……。
『Uボート 最後の決断』のトニー・ギグリオ監督による、本格的なミステリー・アクション映画。映画冒頭からアクションシーンを矢継ぎ早に繰り出し、観客をまったく飽きさせぬままクライマックスまで運んでいく手腕は大したもの。コナーズ刑事役のジェイスン・ステイサム、相棒デッカー刑事役のライアン・フィリップ、犯人のリーダー格ローレンツ役にウェズリー・スナイプスという中堅実力派を揃えたキャスティングが、ゴツゴツしたこの映画の手触りを生み出している。主役のコナーズ役にステイサムというキャスティングが面白い。これはもっとキャリアのある俳優が演じてもいい役だし、場合によってはウェズリー・スナイプスと役を入れ換えてもいいものだと思う。しかしこの配役によって、映画後半の意外な展開が生きてくる。法を破ることなく少し曲げるのだとうそぶくコナーズの豪腕ぶりも、ステイサムが演じるとピッタリとはまるのだ。
脚本もギグリオ監督本人が書いているのだが、全体の構成についてはちょっと不満もある。映画冒頭にコナーズが停職になった原因となった事件を挿入しているのだが、これは映画の後半で、デッカー刑事が事件の真相を知るところまでは映像として見せない方がよかったと思う。映画の前半と後半に同じ場面の映像を入れておきながら、後になって観客の知らなかった真相を見せるのはズルイ。映画導入部に事件紹介があっても構わないが、映像はテレビニュース風のビデオ画面にするとか、後半で見せる映像とは明確な違いが必要だと思う。
映画の最後にあるどんでん返しも、その前提となるシーンの押しが弱いため、観客はほとんどオチに勘づいてしまうだろう。強盗グループがなぜ逃走成功後も警察を挑発し続ける理由も、映画を観ている時はわかりにくかった。黙って逃げてしまえばそれまでなのに、なぜわざわざ警察を挑発して尻尾をつかまれるようなことをしなければならないのか。一応は「復讐のため」という表向きの理由付けがあるのだが、その裏にある本当の理由は、映画の最後に明確にしておいた方がよかったと思う。
面白い映画ではあるのだが、アクションシーンも「手に汗握る壮絶さ!」と言うより、「お〜、やっとるやっとる」と関心することの方が先に立ってしまうのはなぜだろう。観客を映画に引っ張り込むには、もう少しなにか工夫が必要だったのかもしれない。
(原題:Chaos)