僕の彼女はサイボーグ

2008/04/11 GAGA試写室
『猟奇的な彼女』のクァク・ジェヨン監督が撮った日本映画。
物語の設定そのものに違和感。by K. Hattori

映画「僕の彼女はサイボーグ」オリジナル・サウンドトラック  『猟奇的な彼女』や『僕の彼女を紹介します』のクァク・ジェヨン監督を日本に招き、日本を舞台に、日本の俳優で、日本語で作らせた、SFタッチのラブストーリー。物語の枠組みは映画『ジュブナイル』の原案にもなった「ドラえもん」の最終回。(藤子・F・不二雄の原作とは別に、ファンが独自に作ったもの。)未来の自分が過去の自分を助けるために、優秀なロボットを作って送り込む。ただしこの映画では、ロボットを手にした主人公が、そのロボットに恋してしまうのだ。これは「ドラえもん」で言うなら、のび太がドラえもんに恋をする話に等しい。

 こうなるとこの映画の筋立ては、「ドラえもん」ではない別種の何ものかに変化する。それはギリシア神話に登場するキプロス島の王ピュグマリオンと、彼が作った象牙の女性像ガラテアの物語だ。ピュグマリオンは自分が作った女性像に恋し、人間に変わった彼女と結婚する。この神話を現代風にアレンジしたのが、ジョージ・バーナード・ショーの戯曲「ピグマリオン」であり、それをミュージカルにしたのが「マイ・フェア・レディ」だが、『僕の彼女はサイボーグ』には、人間が人形に恋するという神話の原型がそのまま生きている。いわばこれは、古くから知られているおとぎ話の映画化なのだ。

 しかしこれは、少々グロテスクではないだろうか。人間の男が人形に恋をするという話は、あくまでも「おとぎ話」であって、それを現実の世界で本当にやられるといささかエキセントリックに過ぎるのだ。もっと端的に言うなら、「ヘンタイじゃないの?」ということ。映画の中では主人公が自分へのプレゼントとして美少女キャラのフィギュアを購入する場面などもあり、その延長にヒロインのロボットが存在することが明らかになっている。主人公にとって彼女は、等身大の美少女フィギュアなのだ。あくまでもそれは「人形=ロボット」であって、人間ではない。

 人間の男がロボットに恋をするのが、一概に悪いと言っているわけではない。手塚治虫の長編アニメ『火の鳥2772/愛のコスモゾーン』では、主人公と女性型ロボットの愛情がひとつの大きなテーマになっていた。クリス・コロンバス監督も、男性型ロボットと人間の女性の愛情関係を『アンドリューNDR114』の中で描いている。両者に共通するのは、恋するロボットが作品中では「新しい人間」として扱われていること。彼らは生身の肉体こそないものの、精神はまぎれもなく人間そのものなのだ。ロボットと人間には何の違いもない。彼らは人間と対等なパートナーだ。それを象徴するエピソードが、人間とロボットの恋愛という話になる。

 しかし『僕の彼女はサイボーグ』では、ロボットは最後までロボットのままだ。彼女は人間らしい感情を獲得はしても、最後まで人間そのものにはなり得ない。それを明らかにするのが、映画の最後にある物語全体の種明かしだ。

5月31日公開予定 サロンパスルーブル丸の内ほか全国松竹東急系
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
2008年|2時間|日本|カラー|シネマスコープ|ドルビーデジタル
関連ホームページ:http://cyborg.gyao.jp/ 関連ホームページ:The Internet Movie Database (IMDb)
DVD:僕の彼女はサイボーグ
サントラCD:僕の彼女はサイボーグ
主題歌CD:約束の翼(初回生産限定盤)(紙ジャケット仕様)(MISIA)
主題歌CD:約束の翼(MISIA)
挿入歌CD:キズナ(Hi-Fi CAMP)
ノベライズ:僕の彼女はサイボーグ
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