モダンな新築ビル最上階に作られた、落ち着いたムードのロフトルーム。そこは気心の知れた男たち5人が共同で使う、妻や家族には内緒の隠れ家、情事のための秘密の部屋だった。だがある朝、その部屋で若い女がひとり殺されているのが見つかる。部屋の鍵は仲間たち5人しか持っておらず、外部から第三者が侵入した形跡はゼロ。いったい誰が何のためにこんなことをしたのか? 今すぐに警察を呼ぶべきか? それとも……。むごたらしいその死体の存在が、男たちの抱えた秘密を暴き出していく。
ベルギーで大ヒットしたというサスペンス・ミステリー。映画の構成がちょっと複雑な作りになっていて、事件現場となるロフトを中心にしながら、時間軸が前後に大きく動いていく。死体が発見された朝から、部屋を所有していた5人の男たちに対する警察の取り調べが終わるまでが、この映画のベースとなる時間軸。そこに事件に至るまでの経緯が、回想形式で盛り込まれ、さらにエピローグとして事件から数ヶ月後の様子が語られる。ひとつの大事件があって、それに対する警察の取り調べが回想形式で語られるという作りは、ブライアン・シンガーの『ユージュアル・サスペクツ』にも似ている。ただしここでは証言者が5人に増えているし、それぞれの証言と回想が錯綜して観客を巧みにミスリードしていく。『ユージュアル・サスペクツ』のような、物語の構造上の本質的なまやかし(それこそがこの映画の見どころ)はないのだが、映画を観ているとすっかり一杯食わされてしまうのだ。
設定や物語の筋立てには、映画ならではのファンタジーがたっぷりとまぶしてある。特に男たちの関係は相当に都合がいいものだ。この人たちは、そもそもどういう関係の知り合いなんだ? 年齢も職業もばらばらで、しかも互いに家族ぐるみの交際をしている。映画の中では彼ら5人を「秘密の部屋」が結びつけているわけだが、部屋を共有するに至るまでの信頼関係を、彼らがいかにして持つようになったのかは映画にまったく描かれない。もちろんそんなものがなくても映画は成立しているから構わないのだが、男たちの生活ぶりがかなり浮世離れしたものに見えてしまうのも事実なのだ。
しかしそれでもこの映画がドラマとしてのリアリティを失わないのは、男たちと家族(妻)との関係がやけにリアルに描かれているからだろう。物語自体も「浮気の代償は高くつく」といったテーマを浮かび上がらせてくるわけで、これじゃほとんど『危険な情事』だ。(デュッセルドルフで1度だけ浮気したら相手が家まで押しかけてきて……という話などは、まさにソレではないか。)そしてことあるごとに、妻たちが夫に向ける軽蔑と疑惑の眼差しには背筋が凍るような気がする。しかし妻がこういう目で夫を見るから、男たちはそこから逃げるために秘密の部屋を持ちたくなるのだ……とも言えそう。浮気の言い訳。悪循環だね。
(原題:Loft)
DVD:ロフト
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